年金問題で貧乏くじを引いたシステム会社

週刊ダイヤモンド6月23日号の記事によれば、基礎年金番号に統合されていない該当者不明の「宙に浮いた」5000万件の年金納付記録。世間を騒がせているこの問題を解決するための年金記録照合プログラムの開発業者に、「NTTデータ」と「日立製作所」の2社が指名されたようだ。すでに社会保険庁の年金システムの開発や運用で実績のある両社に対し、競争入札ではなく随意契約による発注になった。
問題は、政府の認識と納期である。
5月30日の党首討論で阿部首相が、「1年以内に5000万件すべての記録の突き合わせを終わらせる」と確約した。この発言の背景には、年金記録の照合プログラムに対する過大な評価があるというのだ。首相の発言を受けた柳澤厚生労働相も「プログラムの問題が一番大きいが、練達の方々にお願いして、できるだけ短期間で開発していただく」と国会で答弁した。
国の中枢にいるにもかかわらず、コンピュータに対する認識がここまで甘いことには呆れる。プログラムはあくまで道具だという鉄則をなぜ忘れるのか。プログラム自体はそう難しいものだとは思わないが、照合プログラムの肝はあくまで「入力されたデータの正確性」と「照合されたデータの人による目視最終確認」であろう。
記事には昨今問題となった保険金の不払い問題で、大手生保が数百万件の契約を調査するのに延べ4000~5000人を動員して8ヶ月かかったことも載っている。
仮に1年で照合が終了しなかったり、照合結果にミスがあったりでもしたら、政府はシステムのせいにして逃げるつもりなのか?そういう道筋をすでに用意しているとすればさらに問題だろう。